2007年11月13日火曜日

「永い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は,皆かけがえのない存在です」(天皇陛下)



今回の天皇陛下のブルーギル発言を、大衆環境攘夷主義者に迎合するマスコミは「天皇陛下の自己批判」として大々的に報道しているが、先のエントリーで書いたようにこれは天皇陛下の真意を曲げて報道しているものだ。このエントリーのコメント欄で教えてもらったが、唯一京都新聞だけが「ご挨拶」での天皇陛下の違う趣旨の言葉を引用している。真実はどこにあるのか? 宮内庁のホームページで天皇陛下のご発言の全文を手に入れた。

これがそのご挨拶の全文である:
◇天皇陛下のおことば
第27回全国豊かな海づくり大会
平成19年11月11日(日)(滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール)

 第27回全国豊かな海づくり大会が,湖では初めて,ここ滋賀県大津市の琵琶湖畔において開催されることを,誠に喜ばしく思います。 
 琵琶湖は永い歴史と広大で多様な環境を有し,湖に固有の多くの生物を宿しています。これら固有の生物はそれぞれ琵琶湖の環境に適応し,幾つかの種類では近似種間で生態や生育水域を異にしてすんでいます。琵琶湖には3種のナマズがすんでいますが,その中の2種ビワコオオナマズとイワトコナマズは1961年に友田淑郎博士によって新種として記載されたものです。湖岸部を住処(すみか)とするナマズに対して,ビワコオオナマズは沖合で魚を追い掛けて生活し,イワトコナマズは岩礁地帯に生息して真横に突き出た目で小魚やエビを探して食べています。かつて池でナマズとビワコオオナマズを飼ったことがありましたが,浮き餌(え)の食べ方が両者で異なり,ナマズが上方のものを食べるのに適しているのに対し,ビワコオオナマズは前方のものを食べるのに適しているように思いました。これらの環境に適応した種類を見る時,生物進化の妙を深く感じます。
 この琵琶湖において,近年,集水域や湖畔での経済活動により水が汚染し,魚類の産卵繁殖場が減少するなど環境の悪化が進んできました。外来魚やカワウの異常繁殖などにより,琵琶湖の漁獲量は,大きく減ってきています。外来魚の中のブルーギルは50年近く前,私が米国より持ち帰り,水産庁の研究所に寄贈したものであり,当初,食用魚としての期待が大きく,養殖が開始されましたが,今,このような結果になったことに心を痛めています。
 昭和52年に,初めて大規模な淡水赤潮が発生したことを契機として,琵琶湖の環境保全のための真剣な取組が開始され,以来,産卵繁殖の場であるヨシの生い茂る地帯の造成や,湖岸の清掃,周辺の山々の植林など,多くの人々が協力して,最近は湖の環境は良くなってきていると聞きます。再び魚影豊かな湖となることを期待しています。
 永い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は,皆かけがえのない存在です。かつて琵琶湖にいたニッポンバラタナゴが絶滅してしまったようなことが二度と起こらないように,琵琶湖の生物を注意深く見守っていくことが大切と思います。
 この大会が河川,湖沼の生物を愛する心を培い,皆で豊かな湖(うみ)づくりに励む契機となることを願い,大会に寄せる言葉といたします。


http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/okotoba-h19-01.html

まともな国語読解力がある人はじっくりと読んで欲しい。いろいろの利害関係者にご配慮された表現とはなっているが、天皇陛下の真意はあくまでも最後のパラグラフにある「永い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は,皆かけがえのない存在です。」という一言である。これはまるで疑問の余地はない。

つまり「ブラックバスであれ、ブルーギルであれ、わが国に永く適応して生き長らえた生物は、天皇陛下の臣民である。みんな虐めずに大切にして欲しい」という今風の「環境攘夷論者」を諫める天皇陛下の強烈なメッセージなのである。

天皇陛下は、今の日本国民が外国嫌い(ゼノフォビア)攘夷主義に陥っていることを危惧されているのだと思う。これはとても危険な風潮である。最近米国の社会学者が、米国の外来生物排斥運動と米国の好戦的な内向きゼノフォビア志向の間に有意の関係があると統計的に立証したが(ここ)、今のニッポンでは確実にその傾向がうかがえる。2chなどではアホらしいほど顕著だ。滋賀県知事ともあろう人が、2ch並みの頭脳構造の持ち主であることが情けない。

Posted: Tue - November 13, 2007 at 07:29 PM   Letter from Yochomachi   名言(迷言)集   Previous   Next   Comments (7)

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